岩橋善兵衛(5)
2018年(平成30)5月9日の朝日新聞夕刊に、「善兵衛ランド」が関西遺産として紹介されていました。記事の中で森館長が、「日本で一番動いている望遠鏡」とおっしゃっていました。
善兵衛ランドのパンフレット裏面には、「天気がよければ、開館中はいつでも(昼間も)観察できます」と書かれています。これ、本当でした。
「善兵衛ランド」、このネーミングに騙され?ました。まるで、テーマパークか温泉施設のようです。違います。実は・・・。
口径60cm反射望遠鏡です。そこに、太陽プロミネンス観察用(右:タカハシ10cm)と太陽黒点観察用の屈折望遠鏡(左:ニコン10cm)が同架されています。
左右の大きなうちわのような物は、それぞれ「こんな風に見えますよ。」という説明と、太陽光からお客さんを守り見やすくする覆いの役割を兼ねています。
スリットには高度を示す数字が、さりげなく貼られています。
実はこの日、突発的な故障により、60cm反射望遠鏡の筒先の蓋が閉まらなくなりました。通常ならお客さんに事情を説明し、観望を中止するところです。しかし、違いました。「太陽は今日は見れませんが、他のものを見ましょう。」と。(一瞬でも太陽光線が入ると、60cm主鏡や副鏡、その他各部品が故障するためです。)
まずは、金星。これは太陽から離れているので、無事導入できました。
延長接眼装置で、瞬時に接眼部の高さを変えることができます。
60cm反射望遠鏡で見た日中の金星です。
覗き慣れていない人のために、図で「こんな感じに見えるよ。」と係の方がアドバイスをしていました。また、金星の満ち欠けの写真を見せて、「今日はこんな感じに見えてます。」内惑星の満ち欠けを説明するための手作りの太陽・地球・金星(水星)の模型もさっと出てきます。
次はベテルギウス。この時はドームのシャッターを閉めて太陽を通り越し、安全なところでシャッターを全開、そして導入。ベテルギウスと太陽の大きさ比べ用のビーチボール、一等星ごとのデータを書いたプレートも次々と登場しました。
太陽を望遠鏡で見ることが出来なかったので、係の方が大きな遮光フィルターをお客さんに渡していました。そのキャップの内側には50円玉が貼り付けてあり、「太陽は50円玉の穴より小さいよ。」凄技の連続でした。
望遠鏡周辺の手摺りには、説明や写真がいっぱい貼られていました。
こんなこと、よくあるんでしょうね。
「おっちゃん、星見せて!」
「よっしゃ。まずは太陽や。」
「おっ、すごい。」「次は金星やで。」
「次は何見たい。」
「水星見えんのん?」「今日はちょっと太陽に近いから無理やな。」
「今日の月は、何時ごろ来たらよく見えるん?」
「そやな、今日は上弦やから、8時ごろおいで。」
「ありがとう。そしたらお母ちゃんとくるわ。」
「待ってるで。」
パンフレットの右下に、今年度の1日教室の予定(要申込)があります。その最初が「望遠鏡操作説明会」です。なんと、受講者は望遠鏡が借りられるんです。10cm屈折赤道儀の無料貸し出しサービスです。
「善兵衛ランド」は活きています。天文の原点を地で行っているスーパー天文台です。
(参考文献)
朝日新聞夕刊,朝日新聞社(大阪本社),2018.5.9
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2022.06.01 22:21
2022.06.01 13:32