主鏡側面のサイン

 15cm反射望遠鏡の主鏡セルの調整を行なっていた際、主鏡(直径155mm、厚さ23mm、重量980g、ガラス素材SAINT-GOBAN:サンゴバン)の側面に文字らしきものが彫られているのに気付きました。

 よく見ると、「44 F=1.44」とあります。鏡面の裏面に彫られていたのと同じ、中村要氏の筆跡です。44はNo.44の鏡面を指します。新たな宝物を見付けたようで、ますますこの鏡面が愛おしくなりました。

 SAINT-GOBAN社(仏)は、1665年創業の現役の老舗企業です。王立鏡面ガラス製作所が起源です。1859年にフーコーが研磨した80cm反射鏡素材、1876年にコンモンがカルバーに製作依頼した46cm反射鏡素材、ウィルソン山天文台のリッチーが製作した91cm、152cm、254cm反射鏡素材等は、いずれもSAINT-GOBAN社が製造しました。

 私の手元にある薄黄色の15cmのガラス素材は、時代と共に歩んできた重みを、手にずっしりと感じさせます。

(参考文献)

吉田正太郎,望遠鏡発達史(下),誠文堂新光社,1994

 

中村鏡とクック25cm望遠鏡

2016年3月、1943年製の15cm反射望遠鏡を購入しました。ミラーの裏面には、「Kaname Nakamura maker」のサインがありました。この日が、日本の反射鏡研磨の名人との出会いの日となりました。GFRP反射鏡筒として現代に蘇った夭折の天才の姿を、天体写真等でご紹介します。また、同時代に生きたキラ星のような天文家達を、同時期に製造されたクック25cm望遠鏡の話題と共にお送りします。

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