2021.01.31 09:31主鏡側面のサイン 15cm反射望遠鏡の主鏡セルの調整を行なっていた際、主鏡(直径155mm、厚さ23mm、重量980g、ガラス素材SAINT-GOBAN:サンゴバン)の側面に文字らしきものが彫られているのに気付きました。 よく見ると、「44 F=1.44」とあります。鏡面の裏面に彫られていたのと同じ、中村要氏の筆跡です。44はNo.44の鏡面を指します。新たな宝物を見付けたようで、ますますこの鏡面が愛おしくなりました。 SAINT-GOBAN社(仏)は、1665年創業の現役の老舗企業です。王立鏡面ガラス製作所が起源です。1859年にフーコーが研磨した80cm反射鏡素材、1876年にコンモンがカルバーに製作依頼した46cm反射鏡素材、ウィルソン山天文台のリッチーが製作し...
2018.04.23 06:47再研磨 中村鏡No.44の裏面に、1927marchのサインがあります。これは、研磨完了の時期を表します。ですが、中村氏の光学ノート44号には、「1928.Oct」の記述が付け加えられています。「1928.Oct」の意味は何だろうと、ずっと不思議に思っていました。 そんな時、「THE MILKY WAY 第5号」(伊達英太郎著、天文研究会、1934.3.30発行)を読んでいて、「1928.Oct」の謎が解けました。島田氏の、「日本における反射望遠鏡及びそれに繋がる人々」の文章中にそれに関する記述があったのです。以下は、その抜粋です。 「日本の反射鏡界が、故中村氏によって完璧の域に達したことは、何人も知るところである。(中略)水沢の山崎...
2018.04.22 06:45鏡面セルのふた 西村製作所製15cm反射経緯台の製造年は、1943年(昭和18)です。入手以来気になっていたのが、写真1枚目右のふたの存在でした。(左側は、筒口のふた)私は、さすが昔の望遠鏡は、丁寧な工作をしているものだとしか考えてきませんでした。そのため、冬場戸外から室内に入れる際に、鏡面の結露防止のために活用していました。この使い方が、本来の意図とは違うことが、「反射屈折天体望遠鏡作り方観測手引」(中村要著・新光社)を読んでいてようやく分かりました。第三章「鍍銀(メッキ)の注意」として、「鍍銀面は吸取り紙を入れた蓋さえつけておけば普通一年は使える。」とあります。第六章 十、「鍍銀面の注意」として、「日本では絶えず蓋さえしておけば田舎で二年、小都会で一年、工業都会...
2018.02.18 02:19ミラーの再メッキ 使用するにあたって、ミラーと斜鏡の再メッキが必要でした。再メッキの依頼先をいろいろ考えましたが、納期・料金を考慮して、ジオマテック株式会社に決めました。納期は3週間、ミラーが24000円、斜鏡が6000円、税込合計で32400円でした。なお、ジオマテックは、ビクセンとも取引がある大手の企業です。
2018.02.17 09:20ミラー裏面のサイン 1927年頃、中村要氏は、京都帝国理学部宇宙物理学教室助手として、鏡面研磨の研究を行っていました。作製したミラーは、西村製作所の経緯台に搭載されて販売されていました。15cm反射経緯台一式で、現在の貨幣価値に換算すると200万円ほどしたそうです。ミラー裏面には、鉛筆書きで「1927 .7.24西村にて再測定、中村」と書かれていました。再メッキの際、ジオマテック(メッキ業者)で消されてしまったのが心残りです。
2018.02.17 07:24中村要鏡との出会い 2016年3月、ヤフーオークションで落札した西村製作所製15cm反射経緯台が、私の許に届きました。ミラー裏面には、「Kaname Nakamura」のサインがありました。鏡は1927年、機械部は1943年製です。日本の反射鏡研磨のパイオニア、中村要氏との運命的な出会いの日となりました。(機械部は1943年製ではなく、昭和43年製であることが分かりました。前所有者が旧鏡筒や機械部を西村製作所で更新しました。2025年3月25日、京都産業大学理学部教授・神山天文台長の河北秀世先生に教えていただきました。)