中村要と R.スコフィールドの往復書簡
(62)1926年10月5日 スコフィールドより中村へ
親愛なる中村様
10月2日付のお便り、ありがとうございました。最近、こちらでもシーイングが非常に悪く、8.5インチはほとんど使えず、6.5インチが原則で、5インチしか使えないこともしばしばです。また、プロミネンスでは2インチに戻さざるを得ませんでした。
昨夕(22時30分)、同封のスケッチに丸印で示したSinus Sabaeusに非常に興味深い不明瞭さがあることに気付きました。同じ時刻に観測されましたか?この不明瞭さは1時間の観測中ずっと続き、前の晩には見られなかったものです。
2台の太陽分光器を受け取られたと聞いて、非常に興味を持ちました。私はそのうちの1つをここで試してみたいと思います。
敬具
(63)1926年10月7日 中村よりスコフィールドヘ(手書き)
親愛なるスコフィールド様
5日付のご丁寧なお手紙、火星の興味深い観測結果を同封していただき、ありがとうございました。私は4日に観測しましたが、残念ながら5日の観測はできませんでした。火星の表面は非常に興味深いです。Libyaはすでに完全に暗くなっているようです。13インチでHellasの十字を見ました。
9日はS.A.F.の会合で神戸に行きます。ヒルガー分光器を持参し16時にお伺いします。火星についてお話できればと思います。
よろしくお願いします。
K. 中村
(64)1926年10月15日 スコフィールドより中村へ
親愛なる中村様
ピッカリング教授から、8月後半から9月にかけてのThaumasiaとSolis Lacusのスケッチをできるだけ早く送ってほしいとのハガキを受け取ったところです。残念ながら私は1枚のスケッチ(鉤状雲を描いたもの)しか描けなかったので、Sinus Ponsの発達を示すスケッチと一緒に送ります。もし上記のスケッチをお持ちでしたら、ピッカリング教授にお送り下さることをお勧めします。
彼はまた、反射鏡の金属鏡筒を完全に覆う木製の囲いが「鮮明さ」を大きく改善すると信じています。ただし、これが野外の反射鏡にのみ適用されるのか、それともドームの下にある反射鏡にのみ適用されるのか、彼は明言していません。
ここのシーイングは最近ひどいです。6 1/2インチでシーイング4-5はまれな瞬間のみで、原則として全く何も見ることができません。1924年10月の間は非常に良かったのですが。
日曜日に数分間、あなたの太陽分光器を試してみましたが、画像の大きさは私のものと全く同じです。スリットが片側だけだと精細にならないので、反対側に色相を合わせなければなりません。紙でできた円形部品が使えるように、縁に少し切り込みを入れてもよろしいでしょうか?
敬具
(65)1926年11月3日 中村よりスコフィールドへ(手書き)
拝啓
このところ、京都のシーイングコンディションは非常に良好です。昨夜はとても穏やかで、シーイングコンディションは標準スケールで13に達しています。火星の地形が見事に特定されました。 Lacui Solisは最も興味深く、いくつかの湖に分解されました。Nector canalの領域の陰影は、現在の特筆すべき性質です。
私は6 1/2インチ エリソン鏡とカルバー平面鏡用の微動を備えた新しいマウントを完成させ、これに2インチ屈折を付けてプロミネンス観測のコメントを出したいと思っています(※)。また、プロミネンス観測用に焦点距離24インチ程度の3インチ反射鏡の製作を計画しています。
よろしくお願いします。
K. 中村
* ヒルガー社の分光器が必要です。返却していただけませんか?
(66)1926年11月6日 スコフィールドより中村へ
親愛なる中村様
3日付で、依頼のあった太陽分光器を書留で返送しました。図のようにスリットに焦点を合わせると、より鮮明に見えると思います。
もし円形部品を付けるのであれば、私のためにも余分に作っておいてください。(もちろん、代金はお支払いします。)円形部品を付ければ、日本中の観測が同じ基準になります。シーイングが悪いので、最近はもっぱら2インチを使っていますが、全体として、この種の観測には屈折鏡の方が良いと思います。シーイングが悪いと、ご存知のように、反射による収差が反射鏡では2倍になってしまいますから。
京都でシーイングが良くなったと聞いてうれしいし、今後も良くなることを願っています。私は最近シーイングが非常に悪いと申し上げましたが、近所の煙突のせいもあるのではないかと考えています。Solisはあまりよく見えたことがありませんが、Nectarは今年はとても広いですね。
よろしくお願いします。
敬具
(67)1926年11月10日 スコフィールドより中村へ
親愛なる中村様
昨夜は、シーイングがとても良くなったとお伝えするために書きます。
ひどい風邪のため数日間観測しませんでしたが、昨夜は暖かかったので午後8時に火星を覗いてみることにしました。そして、シーイングが大きく改善されたことに感動しました。7 1/2インチ235倍と310倍で最高の結果が得られ、平均シーイングは7〜8、時には10でした。Nepenthes-Thoth領域の発達は明確に定義されました。8.5インチフルサイズでは、それほど良い定義は得られませんでした。このままシーイングが良くなり、1924年のような成功を、日本にもたらすことを心から願っています。
昨夜、森下様から電話がありました。6.5インチのアーヴィングの架台が完成したとのことです。彼は非常に熱心なので、もう少し経験を積めば、とても有用な観察者になるでしょう。彼は私の望遠鏡でHellasの十字の腕2本をチラッと見たそうですが、残念ながら私は確認できませんでした。
Thaumasia運河の15番はご覧になりましたか?私はこの出現を1回しか見たことがありません。
敬具
(68)1927年2月19日 スコフィールドより中村へ
親愛なる中村様
長い間、お便りできませんでした。火星観測がうまくいっていることをお祈りしています。今ちょうど、ピッカリング教授からの手紙を受け取ったところです。そこには、あなたからの連絡をとても心待ちにしていると書かれていました。
来月から太陽プロミネンスの観測を再開したいと思います。よろしくお願いします。
以上です。
敬具
(69)1927年2月22日 中村よりスコフィールドへ(手書き)
拝啓
2月19日付のご丁寧な手紙をありがとうございました。20日にS.A.F.の会合で神戸に行きました。
普通の望遠鏡では、プロミネンスの観測は非常に困難であることがわかりました。現在、3インチ反射望遠鏡(焦点距離25インチ)を製作中です。4月からは、プロミネンスの観測に非常に役立つと思います。
ピッカリング教授から私に何度も手紙が来ました。約一週間前に、1926年の6つの完全な図面(1924年21号と同じ)を送りました。たいへん遅くなり、彼を悩ませてしまいました。
G. Calver氏の肖像写真(複製)を同封します。私は13インチCalver鏡の製作年を知ることと、肖像画を送ってもらうことのために、彼に手紙を書きました。彼は現在94歳で、非常に弱っていますが、まだ働くことができると書いていました。また、12.5インチ鏡を作りすぎたためか、製作年がわからなくなってしまったそうです。そして、快く肖像写真を送ってくれました。現在ピッカリング教授が使っている鏡(12 1/2インチ)は、まさにCalver氏が製作したものです。彼の反射鏡を持っているあなたには、きっと興味深いことでしょう。
よろしくお願いします。
K. 中村
(同封写真:カルバーから贈られた肖像写真のコピー)
(70)1927年3月4日 スコフィールドより中村へ
親愛なる中村さん
2月22日付のご親切なお手紙、そして興味深い写真を同封していただき、ありがとうございました。
この写真を頂いてもよいかどうか教えてください。
ピッカリング教授に、1924年に匹敵する6枚のスケッチを送られたと伺って、私は本当に嬉しく思います。コロンボのエリソン氏も、最近の「the English Mechanic」によると、興味深い観察をしているようです。
私は忙しくて、まだ太陽プロミネンスの観測を再開できていません。
しかし、4月からは再開したいと思っています。この観測のために、特別な3インチ反射鏡をお作りになるつもりでしょうが、私の経験では、シーイングがよほど良くない限りは、この種の反射鏡は使えません。私は2インチ屈折望遠鏡で最良の結果を得ており、それはちょうど私たちが使っている特殊なタイプの小型分光器に合っているようです。
よろしくお願いします。
敬具
(出典)
「山本天文台資料より」
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