2017年8月30日、岡山県倉敷市にある、倉敷天文台に行きました。有名な大原美術館などがある美観地区の南西にあります。天文同好会(現東亜天文学会)の岡山支部は、1920年(大正9年)11月に発足しました。1926年(大正15年)、カルバー32cm反射望遠鏡が購入され、倉敷天文台は民間初の天文台としてスタートしました。カルバー32cm反射望遠鏡設置に際して、中村要氏が開所式の前日まで調整していたという新聞記事が今も残っています。中村要氏が完璧と絶賛し、その後の氏の反射鏡研磨の手本としたミラーですが、現在は望遠鏡から外されて星を見ることはできません。ドーム内の1階は、彗星発見で有名な本田実氏の記念館になっています。予約をすれば、見学は可能です。
(追記:中村要氏が「故カルバー氏の追憶」の中で、32cm鏡について述べている文章があります。たいへん興味深いので、引用します。
「この鏡面は、口径315mm焦点距離249cmあって、G.Calver108というサインがあり、ガラス材は明らかにCast disk(鋳造ガラス)で厚さは50mmある。この反射鏡が京都に着いてから2回にわたって地下室の定温の下で鏡面検査を行った。筆者(中村要氏)は、これ程整形の完全な鏡は他に知らない。全く平坦な何一つ欠点のない鏡面である。鏡面で見える特長は、明らかに故意に鏡の端が負修正がとってあって、収差をグラフにすれば、極めて平坦である。少なくとも、製造者(カルバー氏)の驚くべき技術の現れである。筆者がこの鏡面を見たのは、15号(中村要氏の鏡面研磨の通し番号15枚目の鏡面のこと)を終わってからであるが、16号から自分の製造方針が完全に一変し、今でもこの鏡面を手本としているぐらい感銘を与えた。周辺及び像の質から見れば、京大13インチ(33cm)にやや劣るが、単に一個の暗室内の試験対象物として見、或いは製造者の技術云々に対しては実に驚くの他はない。筆者は単に、この光学面が人類の作り得る最善のものであることを述べて、この鏡面の完璧さを示したい。)
開設された当初のカルバー32cm反射望遠鏡
観測中の荒木健児氏
カルバー32cm反射望遠鏡で撮影したティコ付近
(参考文献)
日本アマチュア天文史、日本アマチュア天文史編纂会、恒星社厚生閣、1987年
中村要と反射望遠鏡、冨田良雄・久保田淳著、ウインかもがわ、
故カルヴァー氏の追憶,中村要,天界7巻79號:400-409,天文同好会,1927-09-25
(9~14枚目の写真は、伊達英太郎氏天文写真帖より)
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2024.07.10 08:26
2024.07.09 11:23
2024.07.09 08:34