1,4枚目の写真は、神戸市須磨区にあった、改發(かいほつ)氏のために中村要氏が設計した15cm屈折赤道儀です。改發氏は、アマチュア天文家、特に天体写真の第一人者として活躍した人物です。対物レンズ研磨は中村要氏、機械部は西村製作所が製造しました。国産の15cm屈折望遠鏡としては、初めてのものになります。運転時計も西村製作所が作製した、米ブラッシャー改良型です。対物レンズは、ガラス材の発注、加工等も全て中村要氏が行いました。中村要氏にとっても大型のレンズ加工は初めての経験でした。射場天文台の19cm対物レンズと同じく、第4面が平面という独特な形状をとっていることが特徴です。対物レンズの製作には、約50時間かかったそうです。価格は2800円(現在の貨幣価値に換算すると約1400万円)。同時期に日本光学が計画していた15cm屈折赤道儀で約10000円(同5000万円)、ツァイス製で12000円(同6000万円)、イギリス製で6000円(同3000万円)ですから、西村製作所製がいかに破格の値段であったかが分かります。完成・据付は、1929年3月でした。
改發氏のお嬢様と中村要氏は、婚約をされていました。中村要氏の死後、改發氏は観測機械一切を山本一清氏に譲ったということを、「中村要と反射望遠鏡」の著者冨田良雄氏から伺いました。中村要氏が精魂込めて作製した機材を見るのが、偲びなかったのだと思います。
[2枚目の写真は、1933年2月5日に改發氏が撮影した太陽黒点。3枚目の写真は、西村製作所が製造したブラッシャー改良型運転時計(150円、現在の貨幣価値に換算すると約75万円、5枚目の写真は、東亜天文協会大阪・神戸支部の訪問記念撮影、左上に望遠鏡が見えます)いずれも、伊達英太郎氏天文写真帖より]
(参考:「京都大学学術情報リポジトリ紅 改發氏の15センチ赤道儀)
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