石岡繁雄氏(4)

「蜘蛛の糸」

 石岡繁雄氏は、ファインダーの十字線や、ガイド用接眼レンズの十字線も自作しました。現在では、通常、細い金属線が使われます。石岡氏が使用したのは、蜘蛛の糸でした。以下、石岡あづみ様の聞き書き。

 「遂に、昭和16年望遠鏡は完成して宇宙遥かかなたの微光をはなつ天体を長時間露出によって、次から次へと撮影することになる。この撮影のためには小さな星を照準器の真中に的確に入れるための細い糸が必要となった。

 『木の根元を探すと、女郎蜘蛛の入っている袋が見つかる。それを取って中にいる蜘蛛を引きずり出して、頭と足をちょん切って胴体をつかみ、尻に指を当てて、出て来る蜘蛛の糸をシァーっと、どんどん出して行くと、その内チカッと光る目に見えないほど細い糸が出て来るんや。それを丁寧に持って、照準器に、正確に!直角に!十字に!張るんだが、これが難しい。ちょっと油断すると直ぐにどこにあるか解らなくなる。何しろ肉眼では見えないほど細い。光に当てて光るのをたよりに張るんだよ。やっと終わったと思って望遠鏡を覗いてみると、糸がない。また蜘蛛を探す所から始めなければならない。蜘蛛には殺生なことをしてしまったが、当時のわしは夢中で、そんなことは考えられなかった。』」

(出典)

石岡繁雄の一生HP,「綺羅星の章」


中村鏡とクック25cm望遠鏡

2016年3月、1943年製の15cm反射望遠鏡を購入しました。ミラーの裏面には、「Kaname Nakamura maker」のサインがありました。この日が、日本の反射鏡研磨の名人との出会いの日となりました。GFRP反射鏡筒として現代に蘇った夭折の天才の姿を、天体写真等でご紹介します。また、同時代に生きたキラ星のような天文家達を、同時期に製造されたクック25cm望遠鏡の話題と共にお送りします。

0コメント

  • 1000 / 1000