松隈健彦氏(東北帝国大学)の小清水での観測報告(1)
松隈健彦(まつくまたけひこ,1890~1950)氏は、東北帝国大学天文学教室の創設者です。 *三体問題を研究し、ヒルの周期軌道論におけるループ軌道をポアンカレ、ハフらが解析的に証明したのを実地の計算によって立証しました。(*互いに重力相互作用する三質点系の運動がどのようなものかを問う問題、月の軌道も地球ー月ー太陽の三体問題)
東北帝国大学向山観象所では、1913年(大正2)に観測が開始されました。子午儀室にはバンベルグ製の子午儀が、赤道儀室にはカール・ツァイス製の口径130mmの屈折赤道儀が設置されました。
伊達英太郎氏の書き込みには20cmツアイス屈折赤道儀とありますが、13cmツアイス屈折赤道儀の誤りだと思います。
東北帝国大学数学・物理学教室の建物は、1945年(昭和20)7月の米空軍の空襲で大きな被害を受け、書庫と子午儀室以外は焼失しました。戦後、伊達英太郎氏が使用した26cm反射赤道儀は、東北大学に寄贈されました。
初めての日食観測に臨む松隈氏の意気込みが伝わってくる文章です。
松隈氏の日食観測の目的は、皆既日食時における太陽のミクロ重力レンズ効果(当時、アインシュタイン効果と言われていた)を測定するというものでした。1936年(昭和11)の観測は、松隈健彦氏、小貫章氏、吉田正太郎氏(1912~2015)、岩名義文氏が中心になって行い、仙台高等工業学校の福本喜繁氏らが参加しました。
(引用)
天文月報第30巻第7號,日本天文学会,1937.7
日本の天文学の百年,日本天文学会百年史編纂会委員会,恒星社厚生閣,2008
(参考文献)
天文学人名辞典,中山茂,恒星社厚生閣,1983
三体問題,Wikipedia,2023/8/24閲覧
(東北帝国大学向山観象所のツァイス13cm屈折赤道儀の写真は、伊達英太郎氏天文写真帖より)
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