上の写真は、1929年11月23日に撮影されました。この日は、「倉敷天文臺創立満三週年記念式」が行われました。「天界」にこの日の記事がありましたのでご紹介します。
「倉敷天文臺創立満三週年記念式の報告 主事 水野千里
昭和4年11月23日午後3時から、倉敷天文臺で創立満三週年記念式が挙行せられた。 その対応は次のとおりである。
1 開会の辞 水野千里簡単に開会の辞を述べた。回顧すれば、当天文台の創立されたのは、去る大正15年11月21日で、早くも3周年を迎えることになった。その間天文学普及においては預かって若干の功があったが、研究の方面には物足りないことが多いから何とか、方法をつけて、天文台をもっと有効にしたい旨を述べた。
2 事業報告 水野主事が開会の辞に引き続いて、昨年11月から本年10月迄の事業について報告した。通俗講演としては、水野主事が昨年1月から、太陽系についての連続講演を終わった。その他臨時の問題をも講演し、六高の宮原教授の講演が2回あった。その題目は次の通りである。
宮原教授最近欧米旅行談、地球の密度。
水野主事——天文叢談、小遊星の発見、火星の話、日食の話、時の話、天王星と海王星、遊星、彗星の話、黄道光と対日照、隕石の話。
昨年11月から本年10月まで、毎月参観人員11月44、12月517、1月73、2月216、3月298、4月1135、 5月954、6月186、7月52、8月14、9月157、10月428、合計4074、これには毎月第1、第3土曜日の公開日と、臨時公開日との参観人員を加算してないから、 統計は約7000人、月平均500人と見て差し支えあるまい。
3 式辞 原名誉臺長式辞を述ぶ
その中に「民衆天文臺として、活動しているが、他に誇るべき事業を未だ手をつけかねて居るのは遺憾である。天文同好会の天文台が各地に出来るであろうと思って居るのに、まだ外に設立されないのはなぜであろうか」という事もあった。
4 記念講演
a. 屈折望遠鏡と反射望遠鏡 中村 要氏
屈折望遠鏡と反射望遠鏡とについて、その製法、異なる点、特徴、欠点等一々通俗的に要領を得て、 淳淳として話されたので、聴衆は大に満足した様であった。
b. 欧米天文瞥見 宮原 節教授
宮原氏は最近在外研究員とて、物理学を研究され、その間、英・仏・墺・独・瑞・蘭・米等の各地の天文台を視察されたので、各天文台に関する最新の研究、所感等に就いて述べられ、大に感興を惹いた。
c. 天文学と天文台山本一清博士
天文台に望遠鏡と人との必要になる事は誰しも十分に承知して居るが、場所の必要な事は稍稍(やや)竦外(しょうがい)されて居る感があると説き起し、各地の天文台の比較や、古来天文学者の事柄を述べ、児童は汽車に乗ると窓外の 風物を厭かず眺めているが、地球上にいる人々は足許ばかりに気をとられ、天を望むものは少ない。地球を汽車に例ふれば、天文学者は車掌であるとて、聴衆を引きつけ、天文学者は天界の現象について、人々に呼びかけて居る。去る5月9日の日食の如きは世人をして天に注意せしめたのである。暦は天を旅行して居る吾人の旅行案内記であって、天文学者によって編集されて居る事は充分知られていながら、之を十分に利用するものは少ない。地球という汽車の運転手は誰かというと未だわからないが——ニュートンの運動の法則か、それも少し怪しくなって、アインシュタインの相対性原理の方が良いようであるなど、大に天文学について、その優れたる点を述べて、来会者の拍手の中に壇を降りられた。
5 天文臺案内 次に水野主事は祝電を朗読し、それから人々を天文臺に案内し、天文台について説明し、2,3の星を観望した。
6 天文に関する陳列会 別室に天文に関する絵葉書、図書、星座早見(宮原教授の欧米で蒐集されたの十数種)等を陳列して、一般の観覧に供した。
7 天文幻燈会 夜分は天文幻燈会が開かれ、水野主事は各地の天文臺について、山本博士は天体について説明し、最後に水野主事は光学工業会社から、宮中に納めた4インチ望遠鏡について説明した。
8 閉会の辞 水野主事によって閉会の辞が述べられ、これで記念式は盛会裡に終わった。
本日は児島商船学校、高梁中学校、関西中学校、第六高等学校等よりの団体の来会者も少なからず、前後約200名ばかりの人々が集った。」
この報告を読むと、上の写真をより感慨深く見ることができますね。
(文献)
水野千里(1930), 「倉敷天文臺創立満三週年記念式の報告」,天文同好會,天界10
(106):100-101
0コメント