射場天体観測所(5)

写真星図

 (星図写真裏面に、射場氏の書き込みがありました。とても貴重な情報なので更新しました。)

 今回は、射場氏が所有していた、写真星図(伊達氏が縮写したもの)をご紹介します。これは、コルドバ星図(全12枚)です。裏面に射場氏の書き込みで「台長ペライン博士より拝領せるもの」とあります。

 ユニオン星図(402枚、18等まで)です。「南ア ヨハネスブルグ天文台ウット先生より弊所の観測助成のため特に御寄贈下されたるもの」と射場氏の裏面書き込みがあります。

 上は、パリザ・ウォルフ星図(210枚、17等まで)です。射場氏の裏面書き込みには、「ベルリンの古本屋より買入たるもの210枚 最も精密のものにして 本邦には弊所以外には 東京天文台に30枚あるのみに候 黄道に沿う個所の研究には 最も必要なるもの」とあります。

 バイエル・グラフ星図(9等まで)です。「観測に際し 大略見当を付くるに使用するもの これは丸善に依頼せば 入手することが出来ます 吾等の恩師 要大人(中村要氏のこと)はよくこの星図を使っておられました これの上が即ち アルゲランダー並びにレエンフェルドの分担合作せる ボン星図であります これとコルドバ星図を寄せますと 全天の星図(同一スケールの)となるのであります この他に ハーバード全天写真星図が115枚あります これも東京に55枚あるだけのものです 別に ハーバードの銀河専用星図もありますが これはあまり実用に適しません」と射場氏の裏面コメントがあります。

 これらの貴重な星図は、空襲で資料を失った東京天文台に戦後寄贈され、長く活用されました。星図裏の射場氏の書き込みは、とても貴重な時代の語り部です。

 最後に、「天文月報」に掲載された、射場氏の「星図と星表」と題した文章をご紹介します。

(引用)

天文月報第29巻第5號,日本天文学会,1936.5


天文セミナー第156『日本の民間天文台(Ⅵ)大望遠鏡時代』『日本の天文アマチュアの活躍(Ⅵ)天体写真の先駆け』

天文セミナー 第156回『日本の民間天文台(Ⅵ)大望遠鏡時代』『日本の天文アマチュア の活躍(Ⅵ)天体写真の先駆け』  日本の天文観測施設が大望遠鏡を設置し、いわゆる大望遠鏡時代が始まったのは、当時の東京天文台長・萩原雄祐先生が提 唱された岡山天体物理観測所と堂平山観測所が東京天文台の付属観測所として創設された頃からでしょう。それまでの最大口径の望遠鏡と言えば、東京天文台の 26吋(65cm)屈折望遠鏡でした。10mを超える長大な焦点距離を持つ望遠鏡で、建設当時の世界の天文学の主流であった位置観測が主な目的でした。 1930年代の特異小惑星エロスの地球接近に際して、長大な焦点距離を利用した精密位置観測が行われましたが、特長である長大な焦点距離、言い換えると長 大な望遠鏡の筒がその支点を中心に撓むというアクシデントに見舞われ、その補正に苦労した、と記録に記述されていますが、この望遠鏡は何しろ東京天文台の シンボルでした。 一方、日本の天文アマチュアの活躍は目を見張るようなのが実状で、個人的に観測所を建設し、自身の興味を満たすようなテーマで 観測に励んでいるような状態でした。この実状に一石を投じたのが、当時の竹下内閣による「ふるさと創生基金」でした。国内の総ての自治体に漏れなく配布さ れた一億円基金です。この基金を元手に、幾つかの自治体は天文観測施設を作ることを始めたのです。この動きに、当時の環境庁(現・環境省)が始めていた全 国星空継続観察の事業が後押しをするような結果になりました。極端な表現が許されるなら、それこそ雨後の筍のようにアチコチの自治体に競うように天体観測 施設が作られたのです。そして、あたかも大口径こそ素晴らしい、と言う早まった表現で一位を競い合うような結果を招いてしまったのでした。もとより、口径 の大きなことは天体望遠鏡の重要なファクターですが、それにも増して各部分の精度と強度が問題になり、さらに勤務する職員の錬度や熱意がもっとも重要で す。ボランティアの協力に依存するのも結構ですが永続性に問題があります。自治体の職員の異動によって賄うことも可能でしょうが、異動により職員の熱意も 減少するでしょう。これは、各地に創設された、大口径の望遠鏡を持つ施設に共通する問題点です。しかし、これらの施設が果たす天文の普及は、多くの問題を 抱えながらも着実に成果を挙げ

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中村鏡とクック25cm望遠鏡

2016年3月、1943年製の15cm反射望遠鏡を購入しました。ミラーの裏面には、「Kaname Nakamura maker」のサインがありました。この日が、日本の反射鏡研磨の名人との出会いの日となりました。GFRP反射鏡筒として現代に蘇った夭折の天才の姿を、天体写真等でご紹介します。また、同時代に生きたキラ星のような天文家達を、同時期に製造されたクック25cm望遠鏡の話題と共にお送りします。

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