中村要と R.スコフィールドの往復書簡
(32)1924年12月1日 中村よりスコフィールドへ(手書き)
拝啓
以後、お手紙を以下の住所にお送りください。
伏見野砲兵隊第二十二聯隊第一中隊
一年志願兵 中村要
謹んで申し上げます。
中村要
(33)1924年12月4日 スコフィールドより中村へ
中村さんへ
1日付のお葉書をありがとうございました。現住所をお教えてください。あなたが意図していたように、2インチの望遠鏡を手に入れられることを願っています。あなたは多くの人々に天界の美しさを伝えることができるでしょう。たまには私に手紙を書いてくださいね。
私は幸運にも、最近、巨大な太陽の爆発現象を目撃しました。それは本当に素晴らしい光景でした。鮮やかな赤い炎とロケットのような噴射物が、数分で20万マイルの高さまで上昇し、実際、それらが急速に動いているのがはっきりと見えました。全体の爆発は37分で終わりました。この爆発現象は、ちょうど西の縁を通過している最近の大黒点群の先頭の斑点を取り囲むように広がっている領域で発生しました。私は、太陽の分光学は非常に魅力的だと思います。
よろしくお願いします。
ありがとうございました。
(34)1925年1月29日 中村よりスコフィールドへ(手書き)
拝啓
私は25日に神戸に用事があって行った際に、ご自宅にお邪魔しましたが、ご不在でした。
すでに運転時計の設定と駆動の調整を終え、13インチカルバーの観測準備が整いました。ミラーの性能は小口径に比べて淡い天体には素晴らしいものがありますが、大気の乱れが激しく、6.5インチのエリソン以上のものは見えません。最近いくつかのアイピースを購入しましたが、正確な倍率は不明で、測定したいと思っています。もし使用していなければ、倍率測定用のマイクロメーターを貸していただけないでしょうか。「The Splendour of the Heaven」3巻の価格は75銭×3=2.25円です。
1920年以前のEnglish Mechanicsの古い号をお持ちですか?ニュートン式望遠鏡に関する記事を読みたいのですが。ご存知のように、鏡の実用的な知識については、天文雑誌ではE.M.以外にはほとんど見当たりません。最近、5インチ口径の放物面鏡の製作に成功しましたが、経験を積んで、6インチや8インチにも挑戦したいと思っています。
13インチの接眼レンズは床からかなり高い位置にあり、子午線付近では床から12フィートほどの高さになることもあります。反射鏡は30年ほど前のものですが、とても丈夫でデリケートです。
ありがとうございました。
(35)1925年12月23日 中村よりスコフィールドへ
拝啓
兵役1年が無事終了し、天文台で働くことになりました。ご存知のように、天文台にはG.カルバーの中古の13インチの反射鏡が設置され、観測の準備が整いました。天文台にはカルバーの13インチがもう一台来る予定です。最近では6.5インチのエリソン鏡のために、軽い木製のマウントを完成させました。写真を同封しましたのでご覧になってください。このマウントは天文台の作業室で私が作ったものです。
私はあなたのために「The splendor of the heaven」の最後の3巻22、34、24を持っています。もし必要であればすぐにお送りします。神戸の河内さんから、あなたが12インチの反射鏡を注文したと聞きました。宜しければ、その情報をお聞かせ下さい。
宜しくお願い致します。
中村要
(同封写真:6.5"エリソン鏡用架台)
(36)1925年12月30日 スコフィールドより中村へ
中村さんへ
23日付の手紙には、あなたの反射鏡の興味深い写真が同封されておりました。ありがとうございました。兵役から戻られたとのこと、何よりです。
「天界」の22巻、23巻、24巻をお送りくだされば、嬉しく思います。
私はこの数ヶ月間、他のことでとても忙しかったので、太陽のプロミネンスを時折観察する以外には何もできませんでした。
私はいくつかの美しいプロミネンスを見ました。もっと大きな反射鏡を買おうと思っていたのですが、商売がうまくいかず、今はその余裕がありません。来年の秋には興味深い火星の接近があるので、楽しみにしています。
天文同好会にも13インチの反射鏡が来ると聞いて嬉しくなりました。あなたの手にかかれば、この2つの大きな反射鏡は非常に良い結果をもたらしてくれるはずです。
あなたと天文同好会の皆様にとって、幸多き新年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。
心から感謝いたします。
(37)1926年2月8日 スコフィールドより中村へ
親愛なる中村さん
中・高倍率では非常に正確な測定値が得られますが、開口部1インチあたり5程度の超低倍率ではディスクが大きくなりすぎてしまいます。この装置を使い終わったらお返しください。
2.25円の私書を同封します。
あなたが5インチの鏡の研磨に成功したと聞いて非常に興味を持ち、E.M.の古い号を探しています。
敬具
(38)1926年4月16日 中村よりスコフィールドへ
拝啓
20日のSAFの会合のために神戸に行かねばならず、会合の前の午後5時頃にお伺いしたいと思っています。
最近、ニュートン式望遠鏡用の6インチミラーをいくつか製作しましたが、今では6インチは私にとってとても簡単な仕事になっています。今は森下さんのために4.5インチを作っています。そのうちの一つを私のエリソン鏡用望遠鏡でテストしましたが、良い結果が得られました。画像の鮮明さは非常に満足のいくもので、300倍では間違いなく、アーヴィングより優れています。私自身のフーコーテストによれば、面精度はカルバーやエリソンの水準にほぼ達しています。しかし、figuringが難しいので、shadow testで欠点を除去しておかなければなりません。今は、10インチ口径までなら、それなりの厚みのある良いガラス板が手に入ります。この口径までなら大丈夫です。平面鏡も作れますが、放物面鏡に比べるとかなり難しいです。
ありがとうございました。
中村要
(39)1926年5月11日 スコフィールドより中村へ
拝啓
先日お話しした通り、4月の太陽プロミネンスの観測報告を同封しておきます。曇りや雨でなくても、出勤時間まで雲や霞が十分に取れていないことが多いので、毎日の観測はほとんど不可能です。今月は今のところ1回しか観測していません。もしご希望であれば、今後のレポートで大きなプロミネンスの位置をおおよそ示すことができます。
私の8 1/2インチの平面鏡については、森下氏に売却した6 1/2インチのアービングに付けたことを思い出しました。森下氏は、テストのために喜んであなたにお貸しくださるでしょう。あなたが放物面鏡を作ることに成功したということは、日本のアマチュアにとって間違いなく利益になるでしょうから、本当に嬉しいことです。
よろしくお願いいたします。
敬具
(40)1926年5月18日 中村よりスコフィールドへ
拝啓
プロミネンス観測のご報告、ありがとうございました。6.5 インチアーヴィングの平面鏡についてですが、6 1/2 "s H.N. Irvingと書かれていました。間違いなくアーヴィング製です。私もテストしましたが、完璧な平面ではありませんでした。もし、これを良いプリズムと比較したならば、プリズムの方が良いに決まっています。ごく最近、私は13インチカルバーの平面をテストしましたが、それは私が今まで見た中で最高の光学技術によるものでした。一週間ほど前に、ブリストルのスレイド社から6.5インチの鏡を受け取りました。最も正確なフーコーテストによって非常に注意深くテストされ、実質的に完璧であることがわかりました。スレイド氏はエリソンの最も成功した弟子であり、エリソンは彼を誇りに思っています。しかし、スレード氏の鏡はエリソンほど完璧ではないと言えます。早朝、火星がかなり目立つようになり、北極星も美しいものです。以前、あなたは、私にあなたのカルバー鏡を再メッキするように言われました。もしあなたがお望みなら、私はそれを試みます。鏡を受け取りに行きますので、数日以内にお返しすることができます。
中村要
(41)1926年5月20日 スコフィールドより中村へ
私の親愛なる中村さんへ
18日付のお便り、ありがとうございました。姫路から戻られた山本先生にお会いすることができなかったのは残念です。この返信に、プロミネンスのスケッチと、山本先生への手紙を同封します。
森下さんの6.5インチ平面鏡がアーヴィングのものであることがわかりましたね。私の光学機器の残り物を探しているうちに、別の平面鏡が見つかりましたので、この手紙とは別の書留でお送りします。マークはありませんが、その大きさから判断して、カルバーの8 1/2インチ平面鏡ではないかと思います。
スレイドのミラーを気に入っていただけたようで、とても嬉しいです。
私の鏡を再メッキするという親切な申し出にも感謝します。ご都合の良い日を教えて頂ければ、私の助手に鏡を持たせます。
よろしくお願いします。
ありがとうございました。
(出典)
「山本天文台資料より」
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