1934年(昭和9)に発見されたヘルクレス座新星(DQ星)は、1934年(昭和9)12月13日、イギリスのアマチュア流星観測家Prentice氏によって発見(発見時3等)されました。
この星はその後もゆっくり増光し、クリスマスの頃には、1.3等の明るさになりました。以前は15等ほどの暗い星でしたので、40万倍も増光したことになります。この星は100日近くも極大に近い2~4等の明るさを保ちましたが、4月1日から急に下降しました。10日間で5等から10等まで減光しました。
ヘルクレス座DQ星は、日本のアマチュアが本格的に活発に観測をした最初の新星でした。1920年(大正9)のはくちょう座新星(V476Cyg)を独立発見した神田茂氏の指導を受けながら、多数のアマチュア観測家が観測に取り組みました。その中でも、スペクトル観測を行った宮島善一郎氏の活躍が注目されました。
近接連星系の新星爆発の機構を解明する手掛かりをもたらしたのも、このヘルクレス座DQ星です。継続された追跡観測により、連星系の公転周期が4時間39分であることがつきとめられました。
伊達英太郎氏が撮影したヘルクレス座新星(Nova)です。オリオン座付近を撮影した乾板に、二重露出されています。この頃が極大等級(1.3等)でした。
1935年(昭和10)1月4日に知新観象台(清水真一氏)で撮影された、ヘルクレス新星等の露出時間を変えた写真です。
左が1934年(昭和9)12月25日、右が1935年(昭和10)4月14日に撮影されたヘルクレス座新星です。4月14日には10等星ぐらいになっていました。
この新星は、1935年(昭和10)5月に13等の極小を経て、同年8月には再び6等星になりました。
天界(第165號,166號,167號)には、ヘルクレス座新星の記事が多数掲載されました。
宮島氏の実視観測を読むと、恒星の周囲に星雲状の物質が見えたことが書かれています。
スペクトル観測を写真ではなく文章表記することは、とても難しかっただろうと推測します。
(引用)
わが国を中心とした新星発見小史,斉田博,星の手帖Vol.14(P.45),1981
新星の正体,藤本正行,星の手帖Vol.14(P.12),1981
「ヘルクレス座」新星の発見,小山秋雄,天界,1935,1(165):101,東亞天文協会
ヘルクレス座の新星,山本一清,天界,1935,2(166):122-125,東亞天文協会
花山だより,星見山人,天界,1935,2(166):134,東亞天文協会
変光星報告(24),小山秋雄,天界,1935,3(167):183,東亞天文協会
ヘルクレス座新星の星像の実視観測,宮島善一郎,日本天文学会要報第四巻第三冊別刷,1935
ヘルクレス座新星のスペクトルの実視観測(1),宮島善一郎,日本天文学会要報第四巻第二冊別刷,1935
(ヘルクレス座新星写真は伊達英太郎氏撮影、知新観象台写真は伊達英太郎氏天文写真帖より、宮島氏の資料は伊達英太郎氏天文蒐集帖より)
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2022.09.08 08:46
2022.09.07 22:02