知新観象台は、故清水真一氏(1889-1986)が静岡県島田市の自宅(知新薬局)に設立した私設天文台です。伊達英太郎氏も天体写真に本格的に取り組んでいたので、清水氏とは深い繋がりがあったようです。ちなみに、知新は「温故知新」からとられた言葉です。
1920年代が、日本のアマチュア天文家による天体写真の幕開けと言われています。天体写真を撮影する数少ないアマチュアの一人が、清水真一氏でした。
清水真一氏の特筆すべき業績として、1937年のダニエル周期彗星の発見が挙げられます。東京天文台の広瀬秀雄氏の位置予報に基づき、12.5等の彗星の撮影に成功しました。1939年(昭和14)に、清水氏は日本天文学会天文発見賞を受賞しています。また、1976年(昭和51)には、天体写真による功績により、日本天文学会神田茂記念賞を受賞しています。
清水氏は薬剤師としての業務をこなしながら、当時としては珍しかったDP(写真の現像焼き付け)も行っていました。清水氏は、「天体写真は、天文の知識10%、写真の技術90%」と言っておられたようですが、Fが暗く、感度も低い乾板を使用しての写真撮影には、高度な技術が必要だったということがよく分かります。
清水氏の天体写真家のキャリアは、1946年(昭和21)突然終わってしまいます。機材を静岡県立図書館葵文庫に寄贈されたのです。清水氏は、天文学の分野だけでなく、地域文化・芸術の発展に尽力されたことにより、島田市初の名誉市民として今も顕彰されています。
伊達英太郎氏のアルバムに残された清水氏の天体写真はどれも見事で、時代を感じさせない見事な仕上がりです。今回は、太陽の写真を掲載しました。
(1枚目:左が清水真一氏、右が長男の慧一氏、バックは五藤光学製10cm屈折赤道儀と7.4cmエルマジーレンズツイン写真鏡、他の写真もすべて伊達英太郎天文写真帖より)
参考文献:日本アマチュア天文史,日本アマチュア天文史編纂会,恒星社厚生閣,1987
アーカイブ新聞226号,国立天文台天文情報センター
0コメント