九州帝大ロタ島観測計画(伊藤徳之助教授、1941年4月23日)、東北・九州帝大の要望に対する水路部・秋吉大佐のメモ(1941年6月16日)
九州帝国大学理学部 伊藤徳之助教授の手紙と観測計画です。
伊藤氏は千葉県出身。東京帝国大学卒。中央気象台技師を経て、九州帝国大学工学部(後理学部)物理学教室教授となりました。専攻は変形する物体の力学、地球物理学、応用数学等で、日本初の人工降雨実験を行ったことでも知られています。
「秋吉大佐殿 冠省 御懇書2通有難く拝見仕候 目下教室予弄偏状(よろうへんじょう)防護計画に追われて寸暇なく 為に御返事申遅候次第 御宥免され度候 学研は馘(かか)るなりし候えば 農学部鈴木教授に御返事御依頼申上候も あと少しあと少しと申上候 いづれ御詫び仕るべく乱筆御免下され度候 なお御用有之候はば 来月一度上京致しても宜敷と考えおり候が 本月もこれより新規事案趣意書3通認むべく これにて御免下度候 4月23日 伊藤徳之助
(1)計画
1.九州帝大理学部物理学教室
観測員 確定 伊藤教授 未定 吉山助教授 助手目下欠乏(2名輔職) 学生2,3名
合計3,4名
2.行動予定 9月初旬現地着 9月下旬出発
(10月下旬試験なれば学生は是非下旬出発となるべし)
3.荷物
容積約1 t ? 最大重量40 kg 位
4.観測事項
イ、空中電気の変化 ロ、地電流の変化
ハ、地球磁気の変化
(但しアスカニア製器械大蔵省にて一度輸入不許可目下申請中 日本鉱業より借用予定の分は貸与不承諾せし 当事者俄に3月31日辞職せしため目下不詳)
(2)希望事項
1.アスカニア製磁気偏差計輸入許可に関し 該器は日食のみならず 偏力の偏差調査に
あたり軍事上も必要品なれば 大蔵省に輸入許可至急あるよう 御尽力願えれば誠に有難く存候
2. 寡聞にしてロタ島の地質未詳なるも もし珊瑚礁か同形状石灰岩あらば 弾性波探鉱により石灰岩層の深さ測定をし度候が その場合には荷物約半 t 増加 且つ火薬使用の許可と火薬扱者御推薦願い度候」
九州帝国大学 伊藤徳之助教授から、水路部・秋吉利雄海軍大佐へ提出された皆既日食観測計画です。遠征希望先は、北マリアナ諸島のロタ島。ロタ島の北にはサイパン島、南にはグアム島があります。観測機材(アスカニア製磁気偏差計)輸入についての便宜や、ロタ島の地質調査のための火薬使用許可についてなどが書かれています。
九州帝国大学からの輸入に関する問い合わせ事項に関するメモ(秋吉利雄大佐?)です。16-6-16は、昭和16年6月16日の意味です。
1)アスカニア:マグネティック フィールド(磁力偏差計)
2)アトモスフェリック エレクトリシティー(空中電気)
3)アース カレント(地電流)
赤字の意味は不明です。
東北帝国大学や九州帝国大学からの要望に対して、水路部・秋吉利雄海軍大佐(当時)が残したメモです。
(右上)
「右の場合に拠りて万一援助を得られさる場合の予備案を決定し置かるるを必要と考う
支那の場合
*興亜院に拠りて万事考うることと思うも、軍部関係事項あらばこれを考え置くこと必要なり」
(右下)
「内地の場合
計画としては(1)海軍の援助を乞う場合と、(2)海軍の援助を得られさる場合とを考慮し、予算案関係の方は(2)の方にて申出を置くを可と思う
実施の計画に関しては(1)を利とする場合は、これを第一案として援助を要する具体的事項を明示し置く様にせらるること必要なり」
(左)
「⚪︎水路部 ロタ(及び石垣)・・・磁気 天文 ロタ(例えば?)
サイパン ロタ間便船とせんかをわからぬ(天海 海洋?)
⚪︎支那ならば*興亜院にてやらせん、新聞社より招待状(対外的事項)
⚪︎内地ならば外国人招待は今の所きめかねん」
*興亜院(こうあいん)は、1938年(昭和13)12月16日に開設された日本の国家機関の一つ。日中戦争によって中国大陸での戦線が拡大し占領地域が増えたため、占領地に対する政務・開発事業を統一指揮するために第一次近衛内閣で設けられた。
※歴史的資料ということで「支那」という名称をそのまま掲載いたしました。
(引用)
故秋吉利雄氏保存資料
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