2つの20cm屈折望遠鏡(2)

日本光学製20cm屈折赤道儀

 国立科学博物館 地球館地下3階に展示されている、日本光学製20cm屈折赤道儀です。

 焦点距離3600mmの長大な鏡筒です。当時は短焦点接眼レンズの性能が低く、高倍率を得るためには、どうしても長焦点のレンズや反射鏡が必要だったそうです。(国立科学博物館 中島隆氏談)

 頑強な造りです。製作技術者の魂がこもっているようです。

 ピラー中程に設置された、重錘式の稼働装置です。ピラーの継ぎ目に、極軸の微調整装置があるのが分かります。

 銘板には「日本光斈 NIKKO」と書かれています。

 錘はピラー内部に設置され、動力の伝達にはチェーンが使われています。

 大きなウォームギアと動力伝達部の様子がよく分かります。

 赤緯微動は、タンジェントスクリューによる部分微動です。

 望遠鏡を北側から見た様子です。

 接眼部まわりと極軸の目盛環です。接眼部の大きな銀色のリングは、太陽投影板固定金具です。

 右斜め上は、10.5cmアストロカメラです。

 「日本の天文台」に掲載された、日本光学製20cm屈折赤道儀の記事です。

 伊達英太郎氏天文写真帖に保管されていた、日本光学製20cm屈折赤道儀の写真です。写真の裏面から、国立科学博物館の案内ボードの写真は、当時のカタログからとられたものであることが分かります。

 伊達英太郎氏天文写真帖の1935年のページに保管されていた、国立科学博物館ドームの写真です。開館後間もない頃の写真であることが分かります。

 天体観測ドームは、竹中工務店製作と書かれています。人物は伊達英太郎氏。

 日本光学製20cm屈折赤道儀で撮影された月の写真です。(裏面の書き込みは、写真とは関係ないようです。)

 小山久子氏が太陽スケッチに、村山定男氏が火星スケッチに使用した日本光学製20cm屈折赤道儀。心の中で深々とお辞儀をしました。

(参考文献)

日本の天文台,天文ガイド編集部,誠文堂新光社,1972

(21~27枚目の写真は、伊達英太郎氏天文写真帖より)

中村鏡とクック25cm望遠鏡

2016年3月、1943年製の15cm反射望遠鏡を購入しました。ミラーの裏面には、「Kaname Nakamura maker」のサインがありました。この日が、日本の反射鏡研磨の名人との出会いの日となりました。GFRP反射鏡筒として現代に蘇った夭折の天才の姿を、天体写真等でご紹介します。また、同時代に生きたキラ星のような天文家達を、同時期に製造されたクック25cm望遠鏡の話題と共にお送りします。

2コメント

  • 1000 / 1000

  • double_cluster

    2024.07.31 06:13

    コメントをありがとうございます。トロートンにしても、日本光学20cmにしても、望遠鏡の寿命は尽きていないと思います。それを使用するかしないかですよね。望遠鏡だけでなく、古いものはみなそうなのでしょう。飾られるだけ幸せ?なんでしょうか。ところで、伊達氏の資料ですが、「日経サイエンス」9月発売号(倉敷天文台100年)で使用される予定です。また、京都産業大学神山(こうやま)天文台・博物館の企画展「中村要と西村製作所〜反射望遠鏡にかけた夢〜(仮)」令和7年3月15日〜6月20日でも展示物として使用される予定です。価値あるものは、徐々に広まっていきますね。いつもありがとうございます。
  • manami.sh

    2024.07.30 14:46

    トロートンの追加説明を掲載していただき、ありがとうございます。 木が使われているとは、びっくりです。 日本光学工業の20センチについても、掲載写真を見ると感嘆してしまいます。 (力が入っていますねぇ。見たいところを写されていて、とても感動的です) こちらは、昭和29年に大改修が行われたと聞いています。 伊達英太郎氏天文写真帖の重要性も、とても大きいですねぇ。 引き続き、楽しみにしております。 暑い日々が続いておりますので、ご自愛ください。