ロサップ島皆既日食(52)

昭和9年南洋ロソツプ島に於ける日食観測に派遣せられし顛末(7)

        礁に入り、陸上に於て支庁長より命を受け引返して春日に到り困難なる横附けを強行

        し、載荷及人員の積移しを行い、(引離す際春日砲門の膨らみにて舷側に凹傷を

        受く)午後2時過ロソツプ錨地に投錨、船員及春日兵員の手を以て荷揚を開始せり。春日

        兵員は午後5時半を以て援助作業を打切り、ランチ1、カツター4 に分乗春日に向いたる

        所、日暮れ水道入口の所在判らず危険を冒し辛うじて帰還、春日は午後10時トラツクに

        向い出港せり、陸上荷揚は11時半を以て完了せり。使用せし島民概数ロソツプ50、ナマ

        20、ピース30名なり。

4. 観測地の選択

66 観測隊は24日実地調査の結果、ロサツプ島西海岸砂地に北方より順次に技研、東大、東

       大、レオール島南海岸に西方より京大、米国、上海、秋吉と観測地を選定せり。

67   オロルツクに観測員を分派する件は、 内地出発当時東京天文台のみ其の希望ある旨通告

       ありしも、若しロソツプに好適なる地あらば分派は取止めたき意向を航海中数

        回天文台長より漏らされしが、ロソツプ等の候補地適当なりとの理由を以て正式にオル

        ロツク行取止め、天候の僥倖を恃(たの)みて全力をロソツプに盡(つく)すべき旨通

        告を受けたり。爰(ここ)に於てオルロツク行の為に準備したる物件は悉(ことごと)

        くロソツプに於て利用することとせり。

5. 観測地に於ける作業の状況

68 観測隊は天幕を張りて雨に備え乍ら荷解きを終り、杭打、捨コンクリート、コンクリー

       ト台の製作に2月3,4日頃迄を費し、7,8日頃器械設置を終りたり。乾燥期なるに拘らず本

       年は殆んど連日雨天にて器械調整試験出来ず、只管晴天を待ちしが幸にして2月14日日食

       中天気快晴、以後晴夜続きし為事前の作業を事後に成し得たることあり。

69 コンクリートは1,2,4の割合、砂利及砂は珊瑚を代用す。水は海水を用うれば乾き遅く且

       炎天下亀裂を生ずるとの注意ありたるを以て、淡水を使用す、杭は6寸丸松材、地中約5

       尺にて止まり之より深くは入らず、又レオール島は土

        地低く海水滲出し来りし為低潮時を見計らいて捨コンクリートを雄したり。京大の器械

        台は約1m 角にして高さ3m 及4m の2個孰(いず)れも鉄筋コンクリート、之に要したる

        淡水は11屯以下なるべし。他の班は低小なる基礎なりし為作業容易にして、島内の井戸

        より水を供給せり。

70 技研及逓信は2月1日より17日迄連続実験を行い、上海はピース島及びアランムワツセル

       島に各一昼夜の地磁気観測を行い、後レオール島に於ける固有の作業に従事せり。

6 ロソツプ撤収及帰航

71 海面の状況及往路の経験に鑑み観測終了後の荷物の撤収に関しては、第六平栄丸をロソ

       ツプに回航せしめ之に積込みたる上トラツクに於て春日に積移すより以外に、安全且容

       易なる方法なしと思考し交渉の結果其の通実施することとなれり、即ち平栄丸は予定命

       令航路を変更して2月13日ロソツプ入港、16,17,19日と3回に分ちて包装出来たる荷物を

       之に運び、20日早朝より残荷を搭載し、人員は同船及平栄丸に分乗午前8時相前後してロ

       ソツプ出港、午後4時トラツク入港、人員

(引用)

故秋吉利雄氏保存資料

中村鏡とクック25cm望遠鏡

2016年3月、1943年製の15cm反射望遠鏡を購入しました。ミラーの裏面には、「Kaname Nakamura maker」のサインがありました。この日が、日本の反射鏡研磨の名人との出会いの日となりました。GFRP反射鏡筒として現代に蘇った夭折の天才の姿を、天体写真等でご紹介します。また、同時代に生きたキラ星のような天文家達を、同時期に製造されたクック25cm望遠鏡の話題と共にお送りします。

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