星の年表

 今回ご紹介するのは、「星の年表」(誠文堂新光社、斉田博著)という小冊子(縦18cm横12cm,118ページ)です。

 著者の斉田(さいだ)博氏(1926-1982)は、アマチュア天文家として、主に天文学史の著述家として有名です。4枚目の写真にある、子供向けの本は、皆さんも学校の図書室で一度はご覧になったことがあるのではないでしょうか。改めてこの本を読んでみると、子供相手だからと、けっして内容を落としていないことが分かります。著者の天文に対する熱い思いが溢れているようにも思います。斉田氏は、日中の勤務を済ませた後、深夜まで著作や翻訳に励まれたと聞いています。

 著書は、訳書も加えると20冊以上になります。これに雑誌への連載も抱えていたのだから驚くほどの仕事量です。

 特に、5枚目写真の「星百科大事典」(R.バーナムJr著、斉田博訳、地人書館)は1302ページという大著です。この本の翻訳は、今回の「星の年表」と同じく死の床でもなされ、出版は、斉田氏の死後となりました。

 前置きが長くなりましたが、「星の年表」は、BC4700年頃から1980年までを8つの時代に分け、天文学的に重要な発見や出来事を詳細に記しているます。分類は、1.暦(こよみ)の天文学時代(1) 2.暦の天文学時代(2) 3.望遠鏡による発見時代 4.天体力学の時代 5.天体分光学の時代 6.恒星天文学の時代 7.電波天文学の時代 8.宇宙物理学の時代です。年表中心の内容(2枚目写真)ですが、時代ごとの特徴を短くまとめた解説には含蓄があります。

 斉田氏のはしがきの文章を、最後にご紹介したいと思います。

「最後に私事であるが、本書の執筆に当り、本年7月病に倒れ、入院闘病を余儀なくされてしまった。状態は思わしくなく、何度となく生死の境をさまよい、今は死をも覚悟している。そうした中での小康状態の折に、ベッドで書き上げたため、読者諸兄に対して不備な点があったらお許し願いたい。私個人としては、私の生涯における最後の仕事になるかも知れない本書の執筆に全身全霊を注いだつもりである。そして今は、書き終えた満足感とともに、これからも続く闘病生活を思うことより、広い宇宙を見つめ、静かにベッドで身体を休めている。」

 天文ガイド編集部が校正刷りを病室に届けた際、「原稿通りに校正を・・・・」と言い残し、翌日永眠されたそうです。

(3枚目写真:「星の手帖」1979秋号、河出書房新社より、参照:ウィキペディア)

中村鏡とクック25cm望遠鏡

2016年3月、1943年製の15cm反射望遠鏡を購入しました。ミラーの裏面には、「Kaname Nakamura maker」のサインがありました。この日が、日本の反射鏡研磨の名人との出会いの日となりました。GFRP反射鏡筒として現代に蘇った夭折の天才の姿を、天体写真等でご紹介します。また、同時代に生きたキラ星のような天文家達を、同時期に製造されたクック25cm望遠鏡の話題と共にお送りします。

0コメント

  • 1000 / 1000