近い!

 2019年7月7日、恒例の星空ウォッチングが開催されました。梅雨の真っ只中でしたが、この日はよく晴れました。七夕の日曜日ということで、小さなお子様連れのご家族が多く来館されました。

 月齢は4.3。上の写真は、薄明中に偏光フィルターを付けて撮像しました。画像処理をすると、カラーだと色が微妙におかしくなります。そこで、今回は白黒の画像にしました。

 「近い!」は、月を見た女の子の言葉です。その子のお母さんも、同じことをおっしゃいました。この日は、クック望遠鏡(125倍)で神酒(みき)の海周辺をご覧いただきました。フラカストリウスクレーターの北側がクワガタムシの角(つの)に似た、印象的な地形です。

 月齢が4.3でしたので、時間の経過と共に、クック望遠鏡の接眼部がどんどん高くなりました。観望用の階段を登っていただきますが、小さなお子さんだと最上段に登ることになり、たいへん危険です。そこで、スタッフの判断で観望対象を変更することにしました。木星はまだ高度が低いので、アルクトゥールスを導入することにしました。

 クック望遠鏡は、元来は観測に使用する機材なので、目盛環で観測対象を導入するように作られています。ファインダーは、観測対象を確認するための補助用具のようです。クック望遠鏡のファインダーは、焦点距離が1m以上あります。焦点距離の長いアイピースを付けても、最低でも20倍、ひょっとすると50倍の倍率が出ているかもしれません。そこで、別途、導入用に5倍のファインダーを接眼部近くに取り付けています。

 お客様にドーム内でお待ちいただいたまま、アルクトゥールスを導入しよとしましたが、一向に視野に現れません。ファインダーの十字線の真ん中には入っています。「おかしい。」スタッフにも確認してもらいましたが、異常はありません。大汗をかきながら、接眼部後方から目分量の導入を試みましたが、4mもの鏡筒なのでうまくいきません。「落ち着こう。」

 やはり、導入用のファインダーがずれてしまっていました。観望開始時には、念入りに調整は済ませていました。時間がかかりそうです。そこでお客様にドーム内から退出していただきました。

 観望対象を視野内に導入することができたのは、かなり後になってからでした。ドーム内にいらっしゃった5~6人のお客様に見ていただいた時は、終了時刻の間際でした。

 今回のスターウォッチングは、私にとって、とても苦しいものになりました。それよりも、もっと残念な思いをされたのは、お客様だと思います。

 5倍ファインダー取り付け部の強化、そして、観望対象を変える前のファインダーのチェック。これらが、今回の大きな教訓になりました。

(当日ドーム内でお待ちいただいたお客様、誠に申し訳ありませんでした。m(_ _)m)

(撮像データ:クック25cm屈折望遠鏡、セレストロン8-24mmアイピース、キャノンパワーショットS95コリメート撮像、参照:「月の地形観察ガイド」白尾元理著、誠文堂新光社)

 

中村鏡とクック25cm望遠鏡

2016年3月、1943年製の15cm反射望遠鏡を購入しました。ミラーの裏面には、「Kaname Nakamura maker」のサインがありました。この日が、日本の反射鏡研磨の名人との出会いの日となりました。GFRP反射鏡筒として現代に蘇った夭折の天才の姿を、天体写真等でご紹介します。また、同時代に生きたキラ星のような天文家達を、同時期に製造されたクック25cm望遠鏡の話題と共にお送りします。

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