渡辺恒夫氏による、1936年の月・火星・土星スケッチです。月のスケッチがとられたのは、月面のLTP(月の異常現象)を確認するためです。
この年の注目の天文現象は、土星環の消失でした。1回目は6月28〜29日頃、2回目は12月28〜29日頃に起こりました。
1936年(昭和11)6月30日に発行された、東亞天文協会観測部遊星面課「回報」第壱号には、課員紹介が載せられています。
渡辺恒夫氏・・・大分前から遊星面の研究をされている熱心家。途中中止されていたが、再び昨年の火星から捲土重来された。8cmで火星スケッチを50枚もされた事は、京都の前田氏と共に、驚異的な事実である。それが口径が小さいから大口径のものに比し確度が劣るものであるにしてからか、その努力、その熱心は誰人も真似ることは出来ない。幸い、昨年来、火星接近の為に、15cm木辺鏡という逸物を持たれたから正に鬼に金棒である。今後の活躍は期待される事や大である。只、氏もまた多忙であるのは、アマチュアの本分として当然な事であるが、残念である。(器械)有効口径155mm木辺氏作、f9反射鏡、マウンツは西村製経緯台、(倍率)335,150,67×、(専攻星、木、火、金星)(利き目:左目)
この他「回報」には、北海道皆既日食(1936年6月19日)のために多忙な木辺氏に代わり、伊達氏がこの年から遊星面課の仕事を引き受けたことが記されています。
(参考文献)
[珍象!!]土星環の再消失,木辺成麿,天界(1936),17(188):48-51,1936-11-25
遊星面課回報,東亞天文協会観測部遊星面課,1936-6-30
(遊星面課回報は伊達英太郎氏天文蒐集帖より、スケッチは全て伊達英太郎氏保管)
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2021.05.02 08:13
2021.05.02 07:32