倉敷天文台100周年(4)

永遠の贋作

 倉敷天文台100周年(3)でご紹介した金星の月面経過?

 実はこれ、芸術の街、倉敷に相応しい名作(迷作?)写真でした。作者(撮影者)は、荒木健児氏です。

 「西天の金星が段々その形を変えていくところを、なるべく沢山撮っておきたいと思って勉強した。その金星も太陽とすっかり仲良くなってしまった(内合)ので、乾板を現像したのであるが、古往今来絶対にない大事件が突発した。ーー結果が如何にと、腕によりをかけて仕上げた乾板に、何も出て来ない。失敗?不思議!ガッカリして次の月を現像すると、月齢8.7の月の表面及び縁に近く可愛らしい明星が鎮座ましますのである!!取枠の番号をあやまって二重うつしにしていたことが分かったが、それと同時に「金星の月面経過」という珍事件を産んでくれたのである。このとってもすばらしいお手際には、自分ながら寒心せざるを得ません。」(「天界」136號より引用)

 90年前、伊達さんと荒木さんの間で、こんなやり取りが繰り広げられたのでは?と考えるだけで楽しいですね。

A(荒木氏):伊達さん、こんな写真が撮れたよ。

D(伊達氏):えっ・・・・。

A:そう、金星の月面経過。

D:そんなことって・・・・・・。

A:実はね、・・・・・・・・・・。

D:なるほど、あるあるですね。これ、下さいよ。

A:えっ、恥ずかしいから、伊達さんに見せたら捨てようと思っていたんだけど。

D:それはもったいないですよ。後世の人を驚かせましょうよ。(これは冗談😀)

A:じゃー、あげるよ。

 90年後、まさかこの写真が公開されるなんて、AさんもDさんも考えていなかったでしょうね。

(引用)

倉敷天文台通信,荒木健児,天界,1932,8(136):282,天文同好会

中村鏡とクック25cm望遠鏡

2016年3月、1943年製の15cm反射望遠鏡を購入しました。ミラーの裏面には、「Kaname Nakamura maker」のサインがありました。この日が、日本の反射鏡研磨の名人との出会いの日となりました。GFRP反射鏡筒として現代に蘇った夭折の天才の姿を、天体写真等でご紹介します。また、同時代に生きたキラ星のような天文家達を、同時期に製造されたクック25cm望遠鏡の話題と共にお送りします。

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