永遠の贋作
倉敷天文台100周年(3)でご紹介した金星の月面経過?
実はこれ、芸術の街、倉敷に相応しい名作(迷作?)写真でした。作者(撮影者)は、荒木健児氏です。
「西天の金星が段々その形を変えていくところを、なるべく沢山撮っておきたいと思って勉強した。その金星も太陽とすっかり仲良くなってしまった(内合)ので、乾板を現像したのであるが、古往今来絶対にない大事件が突発した。ーー結果が如何にと、腕によりをかけて仕上げた乾板に、何も出て来ない。失敗?不思議!ガッカリして次の月を現像すると、月齢8.7の月の表面及び縁に近く可愛らしい明星が鎮座ましますのである!!取枠の番号をあやまって二重うつしにしていたことが分かったが、それと同時に「金星の月面経過」という珍事件を産んでくれたのである。このとってもすばらしいお手際には、自分ながら寒心せざるを得ません。」(「天界」136號より引用)
90年前、伊達さんと荒木さんの間で、こんなやり取りが繰り広げられたのでは?と考えるだけで楽しいですね。
A(荒木氏):伊達さん、こんな写真が撮れたよ。
D(伊達氏):えっ・・・・。
A:そう、金星の月面経過。
D:そんなことって・・・・・・。
A:実はね、・・・・・・・・・・。
D:なるほど、あるあるですね。これ、下さいよ。
A:えっ、恥ずかしいから、伊達さんに見せたら捨てようと思っていたんだけど。
D:それはもったいないですよ。後世の人を驚かせましょうよ。(これは冗談😀)
A:じゃー、あげるよ。
90年後、まさかこの写真が公開されるなんて、AさんもDさんも考えていなかったでしょうね。
(引用)
倉敷天文台通信,荒木健児,天界,1932,8(136):282,天文同好会
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