清水真一氏のハガキ(22)

1939年と1940年の年賀状

 「頌新年 己卯元旦 静岡県島田町 清水真 慧」

(ハガキの左下を拡大したもの)

「夘歳新春漫語

兎と望遠鏡

兎と月とは店子と大家の間柄で 相当古くからの事で志ようが 兎と望遠鏡はそれとはずっと新しく 時は徳川の末期 處は江戸愛宕山 其山上にささやかな茶店を営む老婆が居りました そしてそこに一臺の望遠鏡が据へられました 一日そこへ遊びに来ました大田南畝(なんぼ)の蜀山人をとらへて 其老婆は大田先生でございましたか 誠に恐入りますが今度ここに遠眼鏡を据へましたので 先生に一つ看板をお願ひ致したうございますと 一枚の板を持ち出しました 先生は快諾され直に筆をとって 兎といふ一字を大く書かれました 老婆は驚いて 先生これが看板になりますかと不審がりました 先生は笑いながら 兎は十二支では夘であろう 卯から数えて 夘辰巳午未申酉戌亥子で 十目が子(トウメガネ)であろうがな これは私が学童時代に読んだ蜀山人物語の一節ですが 近頃私が時に使用します 菟庵といふ(う)別号の出所も実は此笑話であります 菟は兎と同字ですが カモフラージするのに 昔も今も艸(くさ)を用いるのも面白いではありませんか 呵呵 (かか:盛んに笑う様子を表す言葉) 昭和14年巳夘元旦 菟庵◯士 尚此星野写真は短焦点レンズで撮影した兎星座であります」

 「龍頭 事此歳 蛇尾敬々 朋年星 象眼歬(ぜん:前の旧字) 在鞠躬(きくきゅう:つとめ励むこと) 須(すべからく)順天 庚辰 新春 題 龍蛇 ニ星 座図 兎盒」

 「賀正 昭和15年1月7日 静岡県島田町 清水真一」

(資料は伊達英太郎氏天文写真帖より)

*年賀状(1940年)の崩し字解読は、柴田哲男様(三木古文書研究会)にしていただきました。

中村鏡とクック25cm望遠鏡

2016年3月、1943年製の15cm反射望遠鏡を購入しました。ミラーの裏面には、「Kaname Nakamura maker」のサインがありました。この日が、日本の反射鏡研磨の名人との出会いの日となりました。GFRP反射鏡筒として現代に蘇った夭折の天才の姿を、天体写真等でご紹介します。また、同時代に生きたキラ星のような天文家達を、同時期に製造されたクック25cm望遠鏡の話題と共にお送りします。

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