リンスコット30cm反射赤道儀
射場天体観測所で最大口径のイギリス・リンスコット製12インチ(約30cm)反射赤道儀です。
写真裏面の通信文
「此の反射に架せてある写真儀は 3インチF5.5ドグマーであります 屈折は4インチで 小さいのは2インチであります(小生最初使用のものを改装せり) 12インチを以て彗星並に小惑星の眼視をしております 時々 天文台よりの依頼に依って 微光星の掩蔽観測をやっております 6インチ反射は近々青島へ嫁入りする模様であります(西村よりの依頼により)」
中村要氏の「近年に於ける英国反射鏡」という文章があります。
「英国に於て反射望遠鏡は最もよく普及し素人の器械として最も活用されて居るがカルバーの優秀なる技術の為めカルバー独占の様な感があり製作者の名は現れて居ない。1900年以前に於ては Jones 或は Linscott 等が知られ特にリンスコットの鏡は1910年頃まであり19インチまで現在でも可なり古物がある。この頃の望遠鏡会社 Wood, Horne and Thornwaite等からも広告されたが現在全く姿がない。由来鏡を作る事を道楽とする人は少なくない。此の中で指導者の地位にあった人としてはヲルター師 Rev. Water(1908年頃死)ブラックロック Wooseley Blacklock 等が知られヲルターはドラルーの指導を受けブラックロック氏は反射鏡のオーリリチーとして知られて居る」
リンスコット12インチ反射赤道儀は、他の機材や資料と共に1946年に機材不足の東京天文台に寄贈されました。ただ架台が弱く、研究用には向いていなかったようです。(カルバー46cm反射赤道儀もそうですが、当時は眼視用としての赤道儀の役割が強かったためです)
(参考文献)
日本アマチュア天文史編纂会(1994)『続日本アマチュア天文史』,恒星社厚生閣:285
中村要,反射望遠鏡の来歴(二),天界,1926,6(68),483-489
(写真は伊達英太郎氏天文写真帖より)
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