「昭和天文クロニクル」

天文キッズの生きた時代

 「戦前、戦中、戦後と、日本の天文学を支えたアマチュア天文家たち」と本の帯に書かれていました。私がブログで扱っている時代とピッタリ。購入した結果、「ど真ん中、ストライク!」でした。


 「はじめにー」で紹介されていますが、この本の語り手は、吉原正廣氏のお孫様の吉原ケイタさんです。そして、ケイタさんをサポートしたのが、姉のサエさんです。しかし、著者は吉原正廣氏の御子息の、たかのひろ氏???。まあ、まあ、読み進めるとそれはどうでもいいかなと。

 内容がとても優れています。昭和の時代背景も、よく描かれています。

 吉原正廣氏は、戦中に筑紫(ちくし)天文同好会に入会し、変光星の観測に励みました。そして、1946年(昭和21)2月、かんむり座T星の再増光を国内で2番目に発見し、日本天文学会から表彰されました。

 おじいちゃんの終活に寄り添い、昭和という時代をアマチュア天文家の生涯と重ね合わせて調べたケイタさん。特に、おじいちゃんの天文資料の保存に主眼が置かれていました。

 「どんなに古くてもボロボロでゴミにしか見えない資料でも、その内容を求めている人にとっては、それは貴重な宝。であるから資料は保存しつづけるべきなのだ。」(「昭和天文クロニクル」P.178)

日本天文研究会の方のこの言葉は至言だと思いました。

 この本で紹介されているアマチュア天文家は3名。小山ひさ子さん、神田清さん、村山定男さんです。また、村山定男さんの最初の師匠は、伊達英太郎さんであったことも詳しく丁寧に書かれています。

 この本を読んで、伊達英太郎氏や秋吉利雄氏の資料の公開は、とても大切な仕事なんだと改めて感じさせられました。

 上は、1948年(昭和23)9月の小山ひさ子氏による太陽黒点観測報告です。(故伊達英太郎氏保存資料より)

中村鏡とクック25cm望遠鏡

2016年3月、1943年製の15cm反射望遠鏡を購入しました。ミラーの裏面には、「Kaname Nakamura maker」のサインがありました。この日が、日本の反射鏡研磨の名人との出会いの日となりました。GFRP反射鏡筒として現代に蘇った夭折の天才の姿を、天体写真等でご紹介します。また、同時代に生きたキラ星のような天文家達を、同時期に製造されたクック25cm望遠鏡の話題と共にお送りします。

2コメント

  • 1000 / 1000

  • double_cluster

    2023.11.05 22:46

    コメントをありがとうございます。軽い感じの書き出しからは想像できないような、中身のある本でした。著者は資料の保存について日本天文研究会に相談していますから、そうなのだろうなと思います。
  • manami.sh

    2023.11.05 09:36

    紹介ありがとうございます。興味深い本ですねぇ。もしかして、共通点は日本天文研究会でしょうか。 私も読んでみようと思います。