2020.06.21 09:34射場天体観測所(2) 射場天体観測所で最大口径のイギリス・リンスコット製12インチ(約30cm)反射赤道儀です。この望遠鏡も、他の機材や資料と共に、1946年に機材不足の東京天文台に寄贈されました。ただ架台が弱く、研究用には向いていなかったようです。(カルバー46cm反射赤道儀もそうですが、当時は眼視用としての赤道儀の役割が強かったようです。) 中村要氏が、リンスコットについて述べている文章がありますので引用します。「英国に於いて反射望遠鏡は最もよく普及し、素人の器械として最も活用されているが、カルバーの優秀なる技術の為、カルバー独占の様な感があり、製作者の名は現れていない。1900年以前に於いては、Jones或はLinscott等が知られ、特にLinscottの鏡は19...
2020.06.13 09:24金星と土星の掩蔽(2) 今回は、静岡県島田の清水真一氏の金星の掩蔽写真をご紹介します。写真の左側が清水真一氏(1889-1986)、右側が彗一氏です。(1934年頃撮影) 清水氏の本業は薬局経営でした。その傍ら、写真術(いわゆるDPE)も習得していました。また、富士写真工業の藤沢信氏の協力を得て、天文用高感度乾板の供給を受けていたそうです。 上の写真には、五藤光学の10cm屈折赤道儀(木製ピラミッド三脚を鉄製に強化したもの)と、二連の8cmF3.5エルマジー人像玉が写っています。
2020.06.06 11:36金星と土星の掩蔽(1) 1933年(昭和8)12月20日、月齢3の月に、金星と土星が次々に隠されるという珍しい現象が起こりました。上は、「天界」(1933年12月号、東亜天文協会)に掲載された解説記事です。この現象の様子を、「日本アマチュア天文史」(日本アマチュア天文史編纂会編、恒星社厚生閣、P.90)から抜粋してご紹介します。 「当日は晴れて澄んだ師走の西空の夕映の残るあたり、相模大山のシルエットの上に三日月をはさんで、土星と金星のならんだ景色は実に美しい眺めであった。(中略)石井重雄が「天文月報」Vol.27(1934)No.3に要約して報告している。冒頭に石井はその美しい光景を「天の海に雲の波立ち月の船、星の林にこぎかくる見ゆ」なる万葉集の古歌をひき賞でている。」